こんにちは。図解ざっくりめがね税理士の谷口(@khtax16)です。
副業が解禁される傾向にあり、いろいろな人が自分の能力で少しずつ稼ぐようになりはじめていますが、
「確定申告って、まずどうすればいいんですか?」
ということを仕事柄よく聞かれます。
それに対していろいろお答えしていたのですが、ただその前に、
そもそもいくら稼げば確定申告を意識すべきなのか
がわかるとよいのかなと考え、フローチャートをつくってみました。
自分で収入を得はじめた方で、
- 専業主婦の方
- 学生の方
- いまは働いていない方
- 社員をしながら副業している方
- パート・アルバイトをしながら自分の仕事もしている方
が対象です。
(ただし、「まだ青色申告の届出を出していない方」が前提です。青色申告の届出を出している場合は、原則として確定申告しておきましょう)
さらに「稼ぎはじめたはいいものの、扶養のままで大丈夫?」を判定する方法についてもまとめましたので、勢いとノリで稼ぎはじめた方は早いうちに確認しておきましょう!
目次
自分が確定申告をしなきゃいけないかのを判定できるフローチャート 超ざっくり図解
どこかに雇ってもらってお給料をもらうのではなく、自分の能力で稼ぐことを「個人事業」などと言うことがあります。
今回の解説記事でも、わかりやすさのために「自分の能力で稼ぐこと」を「事業」と呼ぶ ことにします。
そしてこのへんがごっちゃになりやすいのですが、
・本人が確定申告をしなきゃいけないのか
・いままでどおり扶養のままでいいのか
を判断するときは、まったく別の考え方が必要になることがあります。
税金の制度というのは少々複雑なため、まず「本人が確定申告をしなきゃいけないのか」を、
・事業だけをしている方
(専業主婦の方、学生の方、働いていなかった方)
・給料をもらいつつ事業をしている方
(会社員のまま副業、パートやアルバイトをしながらの方)
で分けながら、そのあとに「扶養に入れるか」を解説していきます!
「自分」は確定申告をする必要ある? 専業主婦・学生・無職だった場合
まず、
- 専業主婦の方
- 学生の方
- いまは働いていない方(無職の方)
といったほかに収入のない方が、自分の事業をはじめたケースを見ていきましょう。
結論から言うと、
「1年の売上が38万円以下」であれば所得税の確定申告はしなくても問題ありません。
(1年というのは、1月~12月に稼いだお金、のことです)
後述もしますが、夫や妻など、家族の扶養にも問題なく入ることができます。
日本に住んでいる人には「基礎控除」といって、ざっくり言うと、一年のうちに38万円は無条件にないものにできる金額が国から与えられています。
なので、仕事をはじめたばかりの方は、まずこの「1年の売上が38万円を超えること」を目標 にするとよいのではないでしょうか。
(38万円じゃなかなか生活もできないですしね)
まず「売上38万円以下」⇒次に「売上-経費で38万円以下」
一番わかりやすい条件からお伝えしてみましたが、では1年の売上が38万円を超えた場合、次に考えるのは、
売上から経費を引いた金額が38万円以下なら所得税の確定申告不要
です。
この「売上から経費を引いた金額」を、税金の専門用語では「所得」といいます。
この状態でも、夫や妻など、家族の扶養にも問題なく入ることができます。
フリーランスをしていると、年の後半でふいに売上が上がってしまうことがありますので、領収書など経費の証拠は必ず取っておくようにしましょう。
(私は最低限、年ごとに、封筒やクリアファイルなどに分けて取っておくことをおすすめしています)
そのほか、経費を漏らさないための方法についても簡単に書いています。
⇒『節税の第一歩は経費を全部計上すること! 領収書がなくても経費にする方法とよくある3つの疑問』
売上が38万円を超えてくるなら「開業届」を出そう!
フリーで働いていると、突然売上がアップすることがあるのが難しいところなのですが、
「よし、私は個人事業主としてやっていく!」
という決意ができた場合、「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に出す ことは私はおすすめしています。
「青色申告って何?」という方向けに、『〔図解〕青色申告と白色申告の違い 個人事業とともに青色申告をはじめよう!』という記事も書いています。
もちろん早い段階で「開業届」を出すに越したことはないのですが、「いままで流れでやってきてしまったので、いつ出したらいいのか」とお悩みの方も結構いらっしゃることがわかってきたので、ひとつのタイミングとして参考になれば幸いでございます。
住民税の確定申告が必要なこともある
実は先ほどから、いちいち「所得税の」と書いているのですが、いわゆる「確定申告」には2種類あります。
- 所得税 ⇒ 税務署(国)に自分の稼ぎを報告する
- 住民税 ⇒ 住んでいる市区町村に自分の稼ぎを報告する
通常、webで検索して出てくる情報の多くは、この「所得税」という税務署に出すほうのことです。
住民税の場合は、売上から経費を引いた金額が33万円以下なら特に確定申告しなくても問題ないのでは、というのが私個人の見解です。
これは上で少し書いた「基礎控除」というものが、住民税の場合は33万円になる、という違いがあるためです。
(国と地方はほんと統一しろ)
また、38万円を超えて税務署に所得税の確定申告をした場合、その情報が自動的に市区町村に回るため、特に市区町村に何かをする必要はないのですが、微妙なのが33万円~38万円のあいだ、というケース。
こういうケースは、お住まいの市区町村のお役所に相談しにいって「住民税の確定申告をしたいんですが」と伝えると、たいていのお役所ならやりかたを教えてくれるはずです。
ただ小さいお役所だと担当者がよくわかっていない、という問題が発生することも多々ありますので、33万円以上ならいっそ税務署へ行って確定申告してしまったほうがスムーズ にいくはずです。
余計に税金が増えるようなこともありませんので、面倒ではありますが税務署で所得税の確定申告をしてしまいましょう。
(後述の「ほかに給料がある場合」は増えますので、住民税だけにしておきましょう)
源泉所得税をとられている場合は、申告したほうがおトクになることも!
また、ライターやデザイナーの方など、源泉所得税をとられている収入がある方は確定申告をすることでむしろ税金が返ってきます。
(たとえ確定申告不要であったとしても)
源泉所得税の仕組みについては『源泉所得税ってどうして取られるの? 取られた後どうなるの? 仕組みをざっくり図解』で書きました。
私としては確定申告をして税金を還付してもらうことをおすすめしますが、確定申告不要の場合、「いくら返ってくるのか」と「確定申告をする手間」を天秤にかけて申告するかしないかを判断するとよいでしょう。
「自分」が確定申告をする必要があるか? 会社員の副業・パート・アルバイトの場合
以上が専業主婦の方など、「その事業だけが収入源」というようなケースでした。
つぎは、
- 会社員をしながら副業的に事業をしている方
- パートやアルバイトをしながら事業をしている方
- 親族の役員、青色事業専従者として働きながら事業をしている方
についてです。
「会社員」というのは、「正社員」「契約社員」「派遣社員」など形式は関係ありません。
要は会社や個人事業主の方から「お給料をもらっている場合」ですね。
これも結論から言うと、
「1年の事業の売上が20万円以下」であれば所得税の確定申告はしなくても問題ありません。
(1年というのは、1月~12月に稼いだお金、のことです)
ただし、これは「稼いでいる本人に確定申告が必要か」の話であり、このケースは「扶養に入れるのか?」の判断が少し複雑になります。
(後述します)
フローチャートを見てみましょう。
これは上で少し書いた「基礎控除」という話とは関係なく、
税務署が「副業の稼ぎが20万円以下なら確定申告しなくてもいいよ」
と言っているからです。
(「金額が小さいからそこまで言わんよ」ということですね)
当記事の説明は、収入が「給与」と「事業での収入」だけの場合を前提としています。
ほかに不動産を貸していたり売ったり年金もらったり保険金もらったり、といった別の収入がある場合はさらにこれらを含める必要があるのでご注意を。
まず「売上20万円以下」 ⇒ 次に「売上-経費で20万円以下」
一番わかりやすい条件からお伝えしてみましたが、1年の売上が20万円を超えた場合、次に考えるのは、
「売上から経費を引いた金額が20万円以下」なら所得税の確定申告不要
です。
この「売上から経費を引いた金額」を、税金の専門用語では「所得」といいます。
(会計や一般的な用語としては「利益」といいます)
フリーランスをしていると、年の後半でふいに売上が上がってしまうことがありますので、領収書など経費の証拠は必ず取っておくようにしましょう。
(私は年ごとに、封筒やクリアファイルなどに分けて取っておくことをおすすめしています)
そのほか、経費を漏らさないための方法についても簡単に書いています。
⇒『節税の第一歩は経費を全部計上すること! 領収書がなくても経費にする方法とよくある3つの疑問』
売上が20万円を超えてくるなら「開業届」を出そう!
フリーで働いていると、突然売上がアップすることがあるのが難しいところなのですが、
「よし、私は個人事業主としてやっていく!」
という決意ができた場合、「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に出すことは私はおすすめしています。
「青色申告って何?」という方向けに、『〔図解〕青色申告と白色申告の違い 個人事業とともに青色申告をはじめよう!』という記事も書いています。
もちろん早い段階で「開業届」を出すに越したことはないのですが、「いままで流れでやってきてしまったので、いつ出したらいいのか」とお悩みの方も結構いらっしゃることがわかってきたので、ひとつのタイミングとして参考になれば幸いでございます。
医療費控除などで確定申告をするなら、20万円以下だろうと申告しないとダメ
上の注意書きで書いたように、この記事は収入が「給与」と「事業での収入」だけの場合を前提としています。
そのほかにも、医療費控除などで確定申告をする場合 は20万円以下だろうがなんだろうが、事業での収入も一緒に申告しなくてはいけません。
ここもごっちゃになってしまいやすいところなので、注意しましょう。
住民税の確定申告が必要なことも
こちらも先ほどから、いちいち「所得税の」と書いているのですが、いわゆる「確定申告」には2種類あります。
- 所得税 ⇒ 税務署(国)に自分の稼ぎを報告する
- 住民税 ⇒ 住んでいる市区町村に自分の稼ぎを報告する
通常、webで検索して出てくる情報の多くは、この「所得税」という税務署に出すほうのことです。
住民税の場合は、非常に残念なお知らせなのですが、
売上から経費を引いた金額が1円でもあるなら確定申告してね
というスタンスを取っています。
(国と地方はほんと統一しろ)
事業での利益が20万円を超えて、税務署に所得税の確定申告をする場合、その情報が自動的に市区町村に回るため、特に市区町村に何かする必要はないのですが、微妙なのがこの1円~20万円の利益が出た、というケース。
こういうケースは、お住まいの市区町村のお役所に相談しにいって「住民税の確定申告をしたいんですが」と伝えると、たいていのお役所ならやりかたを教えてくれるはずです。
なお、専業主婦など、ほかに給料がない方の場合は「税務署で確定申告をしてしまう」ことをおすすめしましたが、残念ながらほかに給料がある方の場合、税務署にも確定申告すると税金が増えてしまいます。
この場合は、面倒ですが住民税だけの確定申告にとどめておきましょう。
源泉所得税をとられている場合は、申告したほうがおトクになることも!
また、ライターやデザイナーの方など、源泉所得税をとられている収入がある方は確定申告をすることでむしろ税金が返ってきます。
(たとえ確定申告不要であったとしても)
源泉所得税の仕組みについては『源泉所得税ってどうして取られるの? 取られた後どうなるの? 仕組みをざっくり図解』で書きました。
私としては確定申告をして税金を還付してもらうことをおすすめしますが、確定申告不要の場合、「いくら返ってくるのか」と「確定申告をする手間」を天秤にかけて申告するかしないかを判断するとよいでしょう。
「私が確定申告しなくてもいいことはわかったけど、私は扶養に入れる? 入れない?」の判定方法
というのが、あくまで「稼ぎはじめた本人が確定申告をすべきなのか」ということについてのお話でした。
少し余談に近いですが、
「稼ぎはじめたはいいものの、これまでどおり税金の扶養に入れる?」
という疑問についてもざっくりと見ていきます。
なお、税金だけでなく社会保険も含めて扶養がどうなるかは、次の記事にまとめましたのでご参照くださいませ。
⇒『税金と社会保険の扶養を知りたい! 個人事業もパートもまとめてざっくり図解』
税金の扶養についての基礎知識 副業の場合に注意する!
最初にざっくりとだけ説明しておきますが、まず扶養というのは、
- 夫や妻、いわゆる「配偶者」の扶養
- 親など家族の扶養
で金額が分かれます。
(夫や妻のほうがゆるい)
また、
・専業で事業をやっている方は、自分が確定申告不要なら扶養にも入れる
・副業のようにお給料をもらいながら事業をやっている方は、下の判定が必要
というように判断のしかたが変わります。
ややこしいのですが、「自分がどの状況なのか」は区別して考えるようにしましょう。
「扶養に入れるか?」を考える場合、収入を合計する!
さて、というわけで、
「会社員・パート・バイトなどで、お給料をもらいながら事業をやっている方」
の判定のしかたを見ていきましょう。
概要をざっくりというと、
給料と事業で稼いだ金額を合計することで判定する
という仕組みになります。
こんな感じですね。
・給料 ⇒ 1月~12月にもらった給料から65万円を引く
・事業 ⇒ 1月~12月の売上から経費を引く
の2つの計算をします。
(ちなみに「1年間の給料が180万円以下」の想定です)
その次に、この2つを合計します。
このように、2つそれぞれ引いたあとの金額の合計が38万円以下 であれば、扶養に入ってもOKということになります。
この合計を、税金の専門用語では「合計所得金額」といいます。
(上の注意書きでも書いたように、この2つの収入しかないことを前提にしています)
そしてこの38万円は、夫や妻の扶養なら85万円以下でもOKになる、とかなりゆるくなります。
(扶養に入れている側の給料が1,120万円以上あると減ったり、ゼロになったりしてしまいますが)
ただ、あくまでこれは税金の話。
『税金と社会保険の扶養を知りたい! 個人事業もパートもまとめてざっくり図解』で書いたように、現実的には「社会保険の扶養に入れるか」も考えて収入の設計をするようにしましょう。
「扶養に入れるか?」を考える場合の具体例 とあるめがねさんの場合
扶養は少し複雑になってしまったので、具体例をつくって見てみましょう。
東京都に、妻の扶養に入りつつ、バイトをしながら自分でおしゃれめがねをつくって売っているめがねさん、がいたとしましょう。
(あくまでもフィクションでござい)
そんなめがねさん、2018年の1月~12月に、
- バイトの給料 80万円
- めがねの販売収入 25万円
といった収入がありました。
めがねを販売するにあたってかかった経費は10万円。
これを計算してみるとどうなるのか。
と、先ほどの計算式に当てはめてみます。
- 給料 80万円 - 65万円 = 15万円
- 事業の収入 25万円 - 10万円 = 15万円
と、合計すると30万円 になります。
合計30万円 < 38万円以下
ということで、めがねさんは無事に扶養に入れました!
バイト先から年末調整をしてもらっていれば、確定申告も不要です。
いかがでしょう、扶養の計算の仕組みがなんとなくわかっていただけましたでしょうか?
自分が確定申告必要? 扶養に入れる? フローチャートまとめ
というわけで、
- 私って確定申告をする必要ある? 専業主婦・学生・無職だった場合
- 私って確定申告をする必要ある? 会社員の副業・パート・アルバイトの場合
- 私は税金の扶養に入れる?
の3つの考え方をフローチャートを使ってざっくりとまとめてみました。
あえて把握しやすい売上の話からはじめ、フローチャート形式にしたことで、「判断するにあたってのハードルが下がるのでは」という狙いを持った本作。
効果のほどははたして。
なお、税金の制度は例外がとにかく多く、こまかすぎてもわかりにくくなってしまいますので、かなりざっくりと書いています。
少々冒険してみましたので、同業者の方など、もしお気づきの点などありましたらご指摘いただけますと大変ありがたいです。
また、これはブログなどをはじめて、広告収入やアフィリエイト報酬をもらいはじめた方でも同じです!
とにかくややこしいため、ついつい後回しになってしまいがちな確定申告のこと。
領収書を溜めておく、開業届を出す、など必要な対策ができるようざっくりと自分の現状を整理しておきましょう!
なお,有料にはなってしまいますが、私は個人事業をはじめたばかりの方のご相談にも単発でお受けしておりますので、
「結局私はどうしたらいいの?」
を知りたい方はご相談くださいませ!
個人の青色申告シリーズ
1.とりあえず仕事・副業をしてみたものの「自分は確定申告が必要?」かが気になる方へ
(この記事!)
2.「青色申告・白色申告ってなに?」という方へ
⇒『〔図解〕青色申告と白色申告の違い 個人事業とともに青色申告をはじめよう!』
3.「青色申告のメリットは?」を知りたい方へ
⇒『青色申告のメリット7つをざっくり図解! 〔個人・所得税Ver.〕』
4.「具体的にどうやって青色申告をはじめるの?」という方へ
⇒『所得税の青色申告承認申請書の記入例 提出の期限と見本・サンプル』
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<余談>
図がそこそこ美しくできた(自画自賛)のですが、WordPressに上げると解像度の関係でぼやけるのがどうにも口惜しい。
解像度上げると容量増えてしまうのだろうし、何かいい解決方法はないのであろうか。
特定の画像だけ解像度上げられるのか…?
⇒ 【目次ページ】超入門編のブログ記事一覧
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● 当事務所では税金のことだけでなくさまざまなご相談にお応えします
⇒ 税金や経理に関するご相談(単発ご相談プラン)