こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。
ニュースなどで「個人事業主が100万円もらえるって聞いたんだけど」といったお問い合わせが、お客さまを中心にかなり増えています。
その制度についてざっくりと解説します。
目次
【新型コロナウイルス支援策】持続化給付金を図解しました
持続化給付金の概要
話題になっているのが、
- 中小企業は最大200万円
- 個人事業主は最大100万円
をもらえる、という点です。
この制度、名前を「持続化給付金」といいます。
(補助金、助成金、など似た名前がいくつかありますが、それぞれの名前に意味があって分類を表しています)
融資などと違い、もらったお金を返さなくてもいい、というのがこの給付金の大きな特徴です。
これにあたって、「自分はいくらもらえるの?」と聞かれることも多いのですが、まず重要なのが 自分はもらえる対象に該当するのかどうか です。
考える順序として、
と、
- 自分はもらえるの?(判定)
- もらえる場合、いくらもらえるの?(金額)
という順番になる、と理解しておきましょう。
いまお話をいただくところでは、まずこの「判定」の時点で対象にならない方もそれなりにいらっしゃる感触です。
(1) 自分はもらえるの?
「自分はもらえるの?」をどうやって判断するかですが、
新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で 50%以上減少していること
が条件となっています。
(投稿日時点の情報です)
ざっくりと言い換えると、「去年の同じ月と比較して、売上が50%以上減ること」になります。
↓ 図にするとこんな感じ
何名かに聞かれましたが、
- 比較するのは、利益(所得)ではなく「売上」
(経費は関係ありません) - 「同じ月」で比較する
は誤解しないようお気をつけいただければ。
たとえば、「2019年4月の売上が40万円でした」という方がいたとしたら、「2020年4月の売上が20万円以下」でないと、そもそもこの制度に該当しません。
この「売上50%以下」に該当して、はじめて「じゃあいくらもらえるんだろう?」に進むことになります。
なお、必ずしも「4月」である必要はなく、2020年1月〜12月のどの月でもいい ことになっています。
たとえばそれまで50%は下がっていなかった人が、8月にはじめて50%下がったら対象になります。
(ただし、比較するのはあくまで「去年の同じ月」です。なので、2019年4月と2020年8月を比較する、といったことはできません)
また、白色申告の個人事業主の場合は、去年の売上を÷12した数字と比較 します。
たとえば、「2019年の売上が240万円でした」という方がいたとしたら、
- 2019年の売上:240万円 ÷ 12月 = 20万円
- 2020年4月の売上:10万円以下
であれば、この条件に該当と考えてOKということです。
(2) いくらもらえるの?
この「私はもらえるの?」の条件を満たして、はじめて「いくらもらえるのか」という計算ができることになります。
計算方法も少し変わっており、先ほどの判定で見た「50%以上減った月の売上」を使います。
2019年の事業の売上 -(50%以上減った月の売上✕12カ月)
というのが計算式です。
「年」とありますが、法人は「50%減った月」の「直前の事業年度の売上」で計算することになります(後日解説を追加予定)。
↓ たとえば、下の状況のAさんがいたとします。まず「自分がもらえるか」を判定します。
↓ 判定はOKだったので、その次に「いくら?」を計算します
(図は個人事業主のケース。中小企業だと最大200万円なので、160万円がもらえることになります)
このように、
- 2020年4月の売上:20万円
- 2019年4月の売上:40万円
- 2019年の1年間の売上:400万円
の3つの要素を使って計算します。
多分上の図のほうがわかりやすいですが、文章でも計算式を書いておくと、
1.判定
2019年4月の売上:40万円 ✕ 50% ≧ 2020年4月の売上:20万円
⇒ 50%以上減少しているので該当
2.金額の計算
2019年の1年の売上:400万円 -(判定で使った2020年4月の売上:20万円 ✕ 12カ月)
⇒計算したら160万円なので、Maxの100万円がもらえる
(個人事業主の場合です。中小企業なら最大200万円)
といった計算になります。
※「判定を満たせば大抵もらえる」という前提で書いておりますが、特定の月の売上が突出して高い場合など、判定を満たしても、金額を計算してみるともらえないケースもまれにあるようです。金額の計算も必ずしてみることをおすすめします。
(3) どうやったらもらえるの?
これらが該当して、はじめてお金をもらえることになります。
申請は電子申請、つまり インターネットを使って申請 することになります。
↓ 経済産業省の専用サイトから申請します
お役所系だとめずらしく、郵送や直接では申請できません。
なのでインターネットが使えない人のために、「申請サポート会場」が各地に用意されています。
(ただし、申請には「30分から1時間かかる」見込みのようなので、時間には余裕を持って行きましょう)
(4) いつごろもらえるの?
申請してから2週間程度で給付 することを想定しているようです。
(補正予算の成立後、1週間程度で申請の受け付けがスタートするとのこと)
また、申請した人の銀行口座に振り込む ことになります。
実際、お客さま関係の様子を見てると、不備がなければ結構入金早いです。
(5) もらったあとどうなるの?
こちらの給付金、「急激に減った売上を補填する」性質を持つもの、ともいえます。
つまり、売上と同じような扱いになるため、所得税や法人税はかかってしまう、ものと考えられます。
(ただし赤字だった場合は、その年の税金は発生しません)
要は「100万円・200万円の売上が入金された」ようなものとして処理をする、ということですね。
勘定科目は「雑収入」などを使います。
ただし、消費税はかかりません。
具体的な経理方法などについて、詳しくは愛知県西尾市の税理士ばんさんが解説してくれています。
(こういう別観点で更新されてると「なるほど!」と感嘆しますね)
経済産業省の公式情報
↓ 経済産業省がかなりまめに情報を更新してくれています。
https://www.meti.go.jp/covid-19/
↓ こちらが4月13日に出た持続化給付金のお知らせ(PDFです)
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin.pdf
上のURLの、「支援策パンフレット」にいろいろな制度が紹介されており、PDFの29ページ目が持続化給付金です。
(2020年4月13日時点のページ数です)
画像も貼っておきます。
持続化給付金のはっきりしてない点まとめ
専門用語を使いながらではありますが、「細かいところでこれどうすんだろ?」という点をまとめておきます。
なお、名古屋の税理士金子さんの下記ブログが情報も早く網羅度も素晴らしいです。
書いてる途中で気づいて「あれ、これ金子さんのサイト紹介すればよかったんじゃね?」という気持ちになりました。
まあでも図解とかつくっちゃったからね。しょうがないよね。
売上は税抜金額か? 税込金額か?
金子さんも書いてますが、会社の経理状況に合わせるのかなあ、という気はしています。
ただ税込経理にすることで増税の影響受けてしまうのはおかしいのでは、という気もしています。
⇒ 追記:添付書類に「減収月の事業収入額を示した帳簿等」とあるので、「総勘定元帳」という帳簿で「売上高」を指定したものを一緒に出せばよさそうです。会社の経理状況に合わせるっぽいですね。
発生主義か? 現金主義でもよいのか?
専門家としては「そりゃ発生主義でしょ」という気持ちもありつつ、小規模でやってらっしゃるフリーランスの方は難しいだろうから、そのへんも会社の経理状況に合わせるのかなあ。謎。
⇒ 追記:添付書類に「減収月の事業収入額を示した帳簿等」とあるので、「総勘定元帳」という帳簿で「売上高」を指定したものを一緒に出せばよさそうです。会社の経理状況に合わせるっぽいですね。
創業1年以内の場合は?
2020年に開業したり、会社を新規設立したりで、「前の年の売上がない」ケースがあり得ます。
法人成りの場合は個人事業主時代と比較できますが、それ以外で実際に影響を受けてしまった方は、個人的には何か手当てしてほしいところ。。
新型コロナウイルスが関係ない場合
たとえば、たまたま就職することになって個人事業を縮小していたことで該当した場合。
制度の趣旨からするとこれは該当しないんだろうなあと。
(ただどうやって判定するんだろう。。)
確定申告をしていない場合
なお、もしですが、確定申告をしていない方は 確定申告しておきましょう!
「2019年分の確定申告書の控え」を一緒に提出しなくてはいけないので、この給付金をもらうには確定申告をしていることが必要です。
まとめ 持続化給付金をもらえるかどうかの判定と金額計算
というわけで、
- 中小企業は最大200万円
- 個人事業主は最大100万円
をもらえるかもしれない「持続化給付金」の制度についてまとめました。
最後にまとめると、
↓ まず2019年の同じ月と比較して、売上が50%以上減ったか? で自分がもらえる人かを判定
↓ もらえる人は、次に下の計算式で「いくらもらえる?」を計算
2019年の事業の売上 -(50%以上減った月の売上✕12カ月)
でもらえる金額を計算する、という内容でした。
本当にいろいろな業種の方が大変な思いをしている今回の状況。
直接的には関係ない業種であっても、半年や1年など時間が経ってから影響が出てくることも考えられます。
できることをひとつずつ積み重ねていって、どうにか乗り越えていきましょう!