こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。
昨日の記事『サンプルを配ったり、見本を置いたりした場合の税務上の注意点』で見本品を贈った側の話をしたので、もらった側の話についてもまとめてみました。
今回は基礎知識と、「化粧品のサンプルのような小さなもの」をもらったときの話が中心です。
もしパソコンのような、自社で使う大きなものをもらった場合の処理を知りたい場合は『パソコン・机など大きなものをもらった! 固定資産をタダでもらったときの会計処理 「受贈益」の注意点②』をご覧くださいませ。
なお、当ブログは基本的に「小さめの規模の会社」を前提としていますので、ご注意くださいませ。
目次
モノをもらったら、収益になる
会社というのは、いろんな取引を「時価」で行うことが前提となっています。
なので会社がモノをもらった場合、そのモノの時価の金額分だけ収益(売上的なもの)が増える ことになります。
時価ってなに?
というお話をすると「まず時価ってなに」と聞かれることが多いです。
かなりざっくり言うと、そのモノを、その時点で、その専門の業者に売った(買った)場合の金額、というのが一番わかりやすいでしょうか。
具体例
たとえば、こんな会社さんがあったとします。
- 会社で車を1台持っているが、いらなくなった。
- 売ろうと思って中古車屋に査定に出したら、100万円と言われた。
- これ、タダ同然で俺が会社から買い取って、俺が中古車屋に売れば、100万円俺のものになるじゃんグヘヘ(社長の心の声)
先に結論から言いますが、こんなことはできません。
これは、この「タダ同然」の金額が時価として認められず、この中古車屋さんが査定した100万円が時価になる、ということですね。
(タダ同然で売るのではなく、タダで上げても同じことになります)
この例を金額で示すと、
- 100万円の査定が出た
- 社長がその車を1万円で買い取る
- 差額の99万円は 社長の給与 とみなされる
ということになってしまいます。
この99万円、社長には所得税などの税金がかかりますし、役員賞与という扱いになるので会社の経費にもなりませんし、いいことは何一つありません。
(「役員賞与ってなに?」という点については今度まとめたいと思います)
どう処理するの?
簿記(会計)の話になるので、わからなければ読み飛ばしていただいて構いませんが、仕訳としては、
◯◯ / 受贈益
というように「受贈益」という勘定科目をつかって、売上と同じように収益として処理することになります。
前置きが長くなりましたか、今回この◯◯に何が入るのか、を見ていこうというのが本題です。
(「仕訳ってなに?」という方は『〔簿記知識ゼロ用〕借方・貸方とは、仕訳とは ざっくり図解』をクリック!)
もらったものが何かによって処理が異なる
取引先から、サンプルをもらったり、机や棚など自社で使うものをもらったり、とモノをもらう場面が時にあります。
これはまずそのモノを何に使うのか、で分けていくとわかりやすいと思います。
考える順序
具体的には、
- まずそのモノを何に使うのか、
- 次にそれがいくらのモノなのか
という順序で考えていきます。
事例によって分けて見ていきましょう。
サンプル品など、配るものをもらった場合
たとえば、化粧品を個人の方に販売している小売店さんが、化粧品をつくっている会社から
「新製品のサンプルつくったから上げるわ。これ来店したお客さんに配っといてよ」
とサンプルをもらったとします。
本来の処理
厳密に言えば、以下のように、もらったときに一旦収益を計上し、配ったときに費用を計上することになります(勘定科目は一例です)。
めんどくさいですね。
- もらったとき 貯蔵品 / 受贈益
- 配ったとき 広告費 / 貯蔵品
実際のところ
ただ、サンプルをもらったといっても、
- もらってすぐ配り終えるので手元には残らない。
- サンプル単体で売れるわけではないので、サンプルに価値はない。
というような状況が多いのではないでしょうか。
なので、
- 決算日時点でそれなりの数のサンプル品が残っている
- 決算日時点で残っているサンプル品が、それ単体でも売れるようなもの
といったような状況でなければ、特に何も処理をしなくても問題は起こらない 場合が多いというのが実際のところです。
(もちろん状況と、どんなサンプル品かに大きく左右されますので、顧問税理士さんと相談されることをおすすめします)
ともあれ「サンプルをもらっただけでうちが何か得をしたわけじゃないよ」という場合であっても、税務調査で突っ込まれる可能性があるということ、またそういった税務署の考え方、は知っておくとよいでしょう。
自社で使うものをもらった場合
サンプルのように配るものでなく、自社で使うもの、たとえば机やイス、棚、冷蔵庫などをもらうことがあります。
これが一番大事なのですが、あまりに長くなりすぎたため次回に回したいと思います(^_^;)
更新次第リンクを貼りますので……
更新しました!⇒『パソコン・机など大きなものをもらった! 固定資産をタダでもらったときの会計処理 「受贈益」の注意点②』
まとめ
というわけで
- モノをもらったときの考え方の基本
- 処理を考えるにあたっての、考え方の順番
- サンプル品など、配るものをもらった場合
についてまとめました。
「自社で使うものをもらった場合」は明日まとめます。
まさかこんなに長くなってしまうとは…。いつもながら見込みが甘かったです。
関連記事
・『サンプルや見本品をもらったときの会計処理 「受贈益」の注意点①』
・『パソコン・机など大きなものをもらった! 固定資産をタダでもらったときの会計処理 「受贈益」の注意点②』