『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは①』で特別損失にするとどうなるかや、メリットデメリットを解説しました。
今回からどういった費用が特別損失として計上できるのか、具体例を挙げていくつもりなのですが、10個以上あるため少々長くなってしまいます。
記事を分けるのはあんまりよくないという噂も聞くのですが、長いと長いで読みにくいかと思いますので、3回ほどに分けさせていただきます。
退職金
昨日も例に出しました退職金ですね。
例に出しておいてなんですが、これはいつ何時でも特別損失になるわけではありません。
以下の2つに分けて解説していきます。
役員への退職金
まず役員への退職金。
役員の方ってそう退職しませんよね(理由もなくしょっちゅう役員が入れ替わる会社さんは何か見直したほうがよいと思います)。
しかも、金額も大きくなりがちです。
なので、役員の方への退職金は基本的に特別損失として計上してよい、ということになります。
従業員への退職金
処理が分かれるのは従業員への退職金です。
これはその会社さんで、
- 従業員の退職が定期的にあるか
- 退職にあたって退職金を支払っているか
などの要素で判断されます
当ブログが対象としているのは社員10人以下の小さめの会社さまですが、そのような会社さんは、
- 従業員の退職自体があまりない
- 退職しても基本的には退職金を支払わない
という状況であることが経験的に多いです。
なので、そのような会社さんで、例外的に従業員の方への退職金が出てきた場合には、特別損失として計上しても問題ないものと考えます。
(ただこれは税理士さんによって考えの分かれる所です。私はこういう状況なら特別損失をご提案します)
(余談)引当金の計上
余談ですが、退職金の支払いが定期的にある会社さんは、基本的に退職金に関する規定をつくられていると思います。
これは役員への退職金についても同様なのですが、規定があるのであれば、「退職給付引当金」「役員退職慰労引当金」を計上することをおすすめします。
(といいますか引当金を計上することが正しい処理です)
退職金はどうしても支払った期に一気に費用化されますので、その期の利益が悪化してしまいがちです。
なので毎期引当金を計上することによって、少しでも負担を分散させ、突発的な赤字を出しにくくするのです。
特別償却
160万円以上の機械など、一定の固定資産を買って特別償却を選択した場合、その特別償却費は特別損失にすべきと私は考えます。
特別償却費を通常の「減価償却費」に混ぜて処理する税理士さんは多いのですが、混ぜてしまったほうが損益を正確に表せていないのでは、と考えるからです。
特別償却とはなんなのか、という疑問については『税額控除と特別償却の違い - どちらが有利なのか(2/2)』という記事で解説をしましたので、そちらをご参照くださいませ。
(税額控除については『税額控除と特別償却の違い - どちらが有利なのか(1/2)』で解説しております)
大きな固定資産の廃棄費用
事例
以前、所有されているコンテナを廃棄したお客さまがいらっしゃいました。
廃棄費用は100万円。そこで、
「これ雑費に計上しなきゃいけないの?」
というご質問を受けたことがありました。
結論から申しますと、これは「固定資産廃棄損」などの勘定科目での特別損失で構いません。
根拠
ややこしいので読まなくてもよいのですが、根拠として、財務諸表等規則ガイドラインというものがあります。
95の2 規則第95条の2及び規則第95条の3の規定に関しては、次の点に留意する。
1 その他の項目を示す科目には、設備の廃棄による損益(当該会社において経常的に発生するものを除く。)、転売以外の目的で取得した有価証券その他の資産の売却又は処分による損益、企業結合に係る特定勘定の取崩益、企業結合における交換損益、事業分離における移転損益、支出の効果が期待されなくなったことによる繰延資産の一時的償却額、通常の取引以外の原因に基づいて発生した臨時的損失等を記載するものとする。
[後略]財務諸表等規則ガイドライン
と、ここに「設備の廃棄による損益は特別損失でいいよ」という旨が記載されているためです(設備の廃棄による利益ってどんな状況なんでしょうね)。
なお,「規則第95条の3」というのが特別損失のことでして、規定としては
(特別利益の表示方法)
九十五条の二 特別利益に属する利益は、固定資産売却益、負ののれん発生益その他の項目の区分に従い、当該利益を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、各利益のうち、その金額が特別利益の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該利益を一括して示す名称を付した科目をもつて掲記することができる。(特別損失の表示方法)
第九十五条の三 特別損失に属する損失は、固定資産売却損、減損損失、災害による損失その他の項目の区分に従い、当該損失を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、各損失のうち、その金額が特別損失の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該損失を一括して示す名称を付した科目をもつて掲記することができる。財務諸表等規則
こんな感じです。
(なお、同じくガイドライン95の2に言及がありますが、「支出の効果が期待されなくなったことによる繰延資産の一時的償却額」も特別損失とするのがよいようです)
注意点
注意点としては、「設備の廃棄」という文言になっているため、固定資産の廃棄ならなんでもかんでも特別損失にできるわけではない、という点です。
まだ調べきれていないだけかもしれませんが、この「設備」がどこまでのものを言うのかは定かではありませんでした。
私個人の感覚では、たとえば机を捨てたり棚を捨てたりといった「備品」ぐらいのものであれば、特別損失として計上するのは微妙かなあという感じです。
ただ特別損失に計上するのは「決算書の評価をよくするため」ですので、その目的からすると数万円の廃棄費用をわざわざ特別損失に下ろしてもどうにもなりません。
ある程度の廃棄費用がかかるものはそれなりに大きなものになるでしょうから、金額を一つの基準として考えてみてもいいかもしれませんね。
まとめ
というわけで今回は
- 退職金
- 特別償却
- 大きな固定資産の廃棄費用
の3つについて解説しました。
毎回3つというわけでもないのですが、次回に続きます。
(まとめ終わったら各回の末尾に目次のようなものつくります)
■ 記事のまとめ
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは①』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは②』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは③』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは④』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは(番外編)』
■ 目次ページ
⇛ 『【目次ページ】借入があるなら決算書を見直そう!』