『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは①』で特別損失にするとどうなるかや、メリットデメリットを解説したのに引き続き、具体的にどんな費用が特別損失として計上できるのか、まとめていきます。
商品がなくなったとき、商品を廃棄したとき
商品がなくなったとき、商品を廃棄したときも、特別損失として計上できることがあります。
ただその頻度によりますので、その頻度に分けて解説していきます。
よくある場合
毎期出るような場合は特別損失として計上することができません。
ガソリンスタンドでガソリンが蒸発してしまったり、食材を扱っている会社さんでどうしても一定数腐ってしまったり、という場合ですね。
ただこの場合であっても、売上原価ではなく、販売費及び一般管理費に計上することは可能です。
(税理士によって見解が分かれるところではあります)
そのほうが粗利益(売上総利益)はよくなりますので、私はそうご提案しています。
しかし一体どのくらいの量がなくなってしまったのか、腐ってしまったのか、を会社さんに把握していただかなくてはなりませんので、手間が増えるというデメリットはあります。
めったにない場合
めったにない場合は、特別損失として計上することができます。
たとえば盗まれてしまったり、事故で破損してしまったり、倉庫に眠っていた商品をまとめて廃棄したり、という場合ですね。
これは上記のような「よくある場合」に該当する会社さんであっても、その原因がめったにないものであれば、そのめったにない部分は特別損失とすることができます。
これも同様「一体どのくらいの量がなくなってしまったのか」を会社さんに把握していただかなくてはなりませんので、そこがデメリットです。
しかしこの場合評価は間違いなくよくなりますので、特に社長さんがその事実を知って、状況を把握して、自ら税理士に言うなどコミュニケーションを密にすることが大切です。
税務調査対策
なお、商品の廃棄は税務調査で揉めやすい項目なので、その対策についても触れておきます。
脱税を見破るためなのですが、税務署はこういった場合「本当に捨てたのか。何も捨ててないのに捨てたことにして損を計上しているんじゃないか」ととにかくなんでも疑ってかかる、という性質があります。
なので「本当に廃棄したよ」という証明のために、
- 廃棄業者の請求書などの関係書類をできる限りとっておくこと
- 廃棄した商品のリストをつくっておくこと
- 廃棄前や、業者への引き渡しのときの写真を撮っておくこと(日付入りで)
ということが対策として有効です。
特に写真は税務調査対策として意外に有効で、
「商品廃棄損がありますが、こんな感じで実際に業者に渡しました」
「旅費交通費がありますが、本当にこの場所に行きました」
「消耗品費がありますが、買ったものはこんな風にお店で使っています」
など、その支払った費用と実際の行動とを結びつけるための説明として活用できます。
大きい金額の費用が出たときは、なるべく写真を撮って、その写真を領収書などと一緒に保管しておく、というひと手間があるだけで、税務調査のときの負担を減らすことができます。
災害による損失
地震や、台風、火災など、どうしようもない災害の影響で被害が出てしまうこともあります。
これは完全に偶発的なものですので、基本的に特別損失に該当する、と考えて大丈夫です。
具体的な範囲としては、次のものが挙げられます。
- 固定資産(建物等の有形固定資産、ソフトウェア等の無形固定資産など)や商品などがなくなる・壊れる等した金額
- 被害を受けた資産の点検費用や、撤去費用など
- 被害を受けた資産の原状回復に要する費用(要は修理代)など
- 災害による工場・店舗等の移転費用など
- 災害による操業・営業休止期間中の固定費
- 被災した代理店、特約店等の取引先に対する見舞金、復旧支援費用や、債権の免除損
- 被災した従業員、役員等に対する見舞金、ホテルの宿泊代等の復旧支援費用
(日本公認会計士協会の『東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応について』を若干くだけた文言に修正しています)
要は被害を受けたものの金額だけでなく、修理代や点検費用、従業員や取引先の方への支援費用なども含めて広く特別損失にできる、ということです。
(従業員がいるのに役員にだけ見舞金出したりしたらダメですよ)
勘定科目としては「災害による損失」や、単に「災害損失」などが多いですね。
また、こちらも固定資産や商品を廃棄する場合、どんな風に壊れてしまったのかなど、写真を撮っておくことが税務調査対策になります(災害の種類によっては難しいことも多いでしょうが…)
訴訟関連費用
訴訟を起こした場合、起こされてしまった場合の費用も、
- 毎期発生するようなものでなく、たまたま発生したもの
- 金額が大きい
という条件を満たせば、その費用は特別損失として計上することができます。
勘定科目としては「損害賠償金」「和解金」などでその項目ごとに分けることもありますし、
弁護士費用なども含めて「訴訟関連費用」という勘定科目にまとめることもあります。
保険解約損
保険を解約した際、保険の種類やタイミングによっては損が出てしまうことがあります。
その場合にも、
- 毎期発生するようなものでなく、たまたま発生したもの
- 金額が大きい
という条件を満たせば、その費用は特別損失として計上することができます。
ただしいくつか保険に入っていて、解約によって利益が出る保険もあるような会社さんですと、
- 解約益は雑収入(営業外収益)
- 解約損は特別損失
ということはできません(ルールに従わず、自社に都合がいいだけの決算書をつくると逆に信用が失われます)ので、会社さんの状況によっては特別損失にしないという選択も大いにあり得るでしょう。
あえて状況を挙げるなら、一つしか保険に入っていないような会社さんに保険の解約損が出たとき、特別損失にすることを検討するようなイメージですね。
勘定科目はそのまま「保険解約損」で大丈夫です。
その他
今まで挙げたもの以外でも、
- 毎期発生するようなものでなく、たまたま発生したもの
- 金額が大きいもの
であればやはり特別損失に計上することができます。
金額が大きいと、基本的にはその性質を表す勘定科目を使わないといけないのですが、
- その⾦額が特別損失全体の金額の10%以下
である場合など、それほど重要でないときは「その他」の区分でまとめることができます。
勘定科目としては「特別損失」または「その他特別損失」などをつかうことが多いです。
まとめ
今回詰め込んでしまいましたが、
- 商品がなくなったとき、商品を廃棄したとき
- 災害による損失
- 訴訟関連費用
- 保険解約損
- その他
の5つについて解説しました。
まだやんのか、という感じですが、明日は番外編についてまとめたいと思います。
(まとめ終わったら各回の末尾に目次のようなものつくります)
■ 記事のまとめ
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは①』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは②』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは③』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは④』
・『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは(番外編)』
==============================
<あとがき>
・昨日はやや久しぶりに師匠と二人で、神田のやきとりセンターさんで飲みました。師匠はやっぱり師匠だなあと思いました。師匠、ありがとうございました。