こんにちは。図解ざっくりめがね税理士の谷口(@khtax16)です。
freeeやMFクラウドを使いはじめてみた方から、よくいただくご相談の一つが、
「売上って入金したタイミングで計上しとけばいいんでしょ?」
というもの。
これに対して疑問にも思わない方も多くいらっしゃるのですが、実はこれ、違うんです。
- 売上 ⇒ いつ入金するかは関係ない
- 経費 ⇒ いつ支払ったかは関係ない
というのが会計というものの基本的なルール。
このルールを「発生主義」というのですが、このルールについてざっくり図解でまとめてみました!
目次
発生主義とは 売上の計上時期・タイミングについての基本的なルール
たとえば、あるデザイナーのAさんがいたとしましょう。
Aさんはある人からデザインの依頼を受け、2017年12月に納品しました。
やったねAさん!
Aさんは納品と同時に請求書をお客さんに送ります。
お客さんは「いつも翌月10日にまとめて支払ってるから、それまで待ってくれよな」と言い、実際に1月10日に入金がされました。
まとめるとこんな状況です。
さて、このデザインの売上は「仕事が終わった12月に計上」でしょうか、「入金された1月に計上」でしょうか?
売上の計上は「仕事が終わった」を基準に考える!
冒頭でも少し言ったように、売上をいつ上げるのかは入金の時期は関係ない、と考えてください。
なのでこの「仕事が終わった日」に売上を計上することになるのです!
なにをもって「仕事が終わった」とするのかは、細かい考え方もいろいろあるのですが、やっぱりざっくり言うと、
- デザイナーや雑貨屋などのように、目に見える商品がある場合はその商品を渡した日
- コンサルタントや美容師などのように、目に見えないサービスを売っている場合はそのサービスを提供した日
にそれぞれ売上が計上されることになるのが基本です。
まさに「発生したとき」に「売上が計上される」ので「発生主義」というのですね。
簿記的には、売上は正確には「実現主義」といいます。
ただ「発生主義」と簡略化されて言われる場面は多いですし、用語が増えるとわかりにくくなってしまうため、当記事ではざっくりと解説しています。
具体的な処理方法1 仕事が終わったあとに入金される場合
「具体的にどう処理したらいいの?」もざっくり見ていきましょう。
もっとも多いのが、上の図解でも使ったこの「仕事が終わったあとに入金される」タイプ。
- 仕事が終わった
- 請求した
- 入金された
という順序のお仕事ですね。
仕訳(しわけ)という形にして、これらの時系列でどういう処理をするかというと、
- 仕事が終わった ⇒ 売掛金/売上高
- 請求した ⇒ (特に何もしない)
- 入金された ⇒ 預金/売掛金
というように、「売掛金」という勘定科目を使って処理することになります。
とはいえmisocaのように、いまは請求書の作成と同時に連動するシステムもあるので、実際には請求書を出したタイミングで売上を計上してもそれほど問題は起きません。
(仕事が終わったのが12月で、請求書の発行が1月だとだめですよ)
(「仕訳ってなに?」という方は『〔簿記知識ゼロ用〕借方・貸方とは、仕訳とは ざっくり図解』をクリック!)
具体的な処理方法2 仕事が終わる前に入金される場合
また、これとは逆に、仕事が終わる前(はじまる前)に入金されるようなこともあります。
- 請求した
- 入金された
- 仕事が終わった
という順序ですね。
この場合は、順序が変わるだけでなく勘定科目も変わり、
- 請求した ⇒ (特に何もしない)
- 入金された ⇒ 預金/前受金
- 仕事が終わった ⇒ 前受金/売上高
というように、この場合は「前受金」という勘定科目を使って処理することになります。
たとえばコンサルタントの方が、コンサルティングの報酬として1年分を先にもらっていた場合も、あくまで仕事が終わった分だけが売上に計上されていくことになります。
ビジネスモデルとしては入金を先にすることは事業の安定につながるので、入金のタイミングをずらせる事業であればなるべくこの「入金が先」を目標にするとよいでしょう。
毎回「仕事が終わった」タイミングで売上を計上しなければいけないのか?
下の記事でも書きましたが、たとえばmisocaのようにクラウド会計ソフトと連動する機能を持ったサービスを使っていれば、自動で「売掛金」などの勘定科目を利用した仕訳が作成されることになります。
ただそうではない場合によくある問題として、
「毎回正しいタイミングで処理をするのは面倒」
ということがあります。
この場合は、
- 年の途中では入金したタイミングで売上を計上
- 決算のときだけ、売掛金などを使ってずれたものを正しく計上
ということをしても、私の経験上では税務署は文句を言ってきません。
なのでどうしても面倒という会社さんはこのような簡便な処理でもよいでしょう。
(税務署は「1年分の正しい売上が計上されているか」を基本的に気にします)
経営に活かす数字にするには正しく売上を計上しよう
ただこれはあくまで「税務署に文句言われないからまあいいかな」というだけの意味合いでしかありません。
経営に活かす数字にするにはなによりも正しく売上を計上していくことは必須です。
もし「うちではうまく発生主義で経理ができない……」ということでお悩みの社長さんがいらっしゃいましたら、『個別コンサルティング』にて「こんなシステムもありますよ」といったご提案を含め、御社に適した経理体制をご提案いたします!
発生主義とは 仕入れや経費の計上時期・タイミング
と、いままでは売上に的を絞ってお話ししていましたが、これは仕入れや経費でもまったく同じ。
仕入れや経費も、いつ支払ったかはまったく関係がなく、
- 目に見える商品がある場合はその商品を受け取った日
- 目に見えないサービスを受ける場合はそのサービスを提供された日
ということを覚えておきましょう!
前払費用や未払費用で調整!
ただ勘定科目は売上のときと変わり、代表的なものだけ挙げると、
- 商品などの仕入れをしたけどまだお金を支払ってないときは「買掛金」
- 先にお金を支払ってまだサービスを受けていないときは「前払費用(前渡金・前払金)」
- もうサービスを受けたけどまだお金を支払っていないときは「未払費用(未払金)」
などの勘定科目を使います。
この()をした「前払費用」「前渡金」「前払金」などもいろいろ使い分けがあるのですが、あまり細かく説明しすぎるとわけがわからなくおそれがあるのでここでは説明しないでおきます。
このへんの細かい勘定科目を間違えたところで死なないし税金変わらないし経営分析に大きな影響を及ぼすわけでもありませんので、これらの違いは今度まとめたいと思います!
(売掛金や買掛金は正しい金額が望ましいですが)
発生主義などの区分のまとめ(余談)
これは特に覚えなくても大丈夫ですが、発生主義などの区分を分類するとこんな感じになります。
というように大まかに3つに分かれ、
- 発生主義 ⇒ 一番タイミングが早い
- 実現主義 ⇒ 次にタイミングが早い
- 現金主義 ⇒ 一番タイミングが遅い
ということになります。
冒頭の「入金したら売上に計上」というのがつまり現金主義のこと。
現金主義はかなり小規模な個人事業の方でしか認められていませんので、実際にはまずありません。
また、上にも書いたように売上は正確には「実現主義」というものなのですが、当記事はざっくり概要をお伝えするのが趣旨ですし私はこんな名前を経営者の方が覚える必要はないと思っています。
実際にいつ売上に計上するのかタイミングを知っておくだけで十分ではないでしょうか。
ただこのタイミングをきっちり詰めていないことはよくあるので、税理士の方と一度話し合ってみるのもよいでしょう。
(解説は省いていますが結構細かいですし、節税に活かせるケースもあります)
発生主義とは 計上時期・タイミングについてまとめ
というわけで、
- 売上の計上時期・タイミングについて
- 仕入れや経費の計上時期・タイミングについて
- 発生主義などの区分のまとめ
についてまとめましたが、ひと言で言うと「『仕事が終わった』が基準!」ということです。
上にも書きましたように、
「うちではうまく発生主義で経理ができない……」
ということでお悩みの社長さんがいらっしゃいましたら、『個別コンサルティング』にて「こんなシステムもありますよ」といったご提案を含め、御社に適した経理体制をご提案いたします。
正しい経営状況の把握はなによりもまず自社の数字をきちんと出すことからはじまります。
たとえ期中だけであっても、できるかぎり現金主義からは卒業しましょう!
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