税務調査で時効を指摘されたらニヤニヤしよう! 時効の援用とは

やや難しめの税金・会計話

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

時効ってテレビや新聞なんかで時々耳にしますよね。

でも、ちゃんとした知識を持っていますか?

個人事業主や経営者の方であれば、時効の知識は持っておいて損はありません。

今回は消滅時効というものについてまとめてみました。

 

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残された買掛金

以前いた事務所で、ちょうど税理士事務所(会計事務所)を乗り換えて私が担当することになったお客さまがいらっしゃいました。

そこで以前からの処理がどうなっていたのか見直したのですが、

 

買掛金 ◯◯社 100円

 

という謎の数字が長年残っていることがわかりました。

 

正体は不明

社長さんに「この100円って何かおわかりになりますか? 支払わなきゃいけないものでしょうか?」とお聞きしたところ、

「いやーこの◯◯社の名前を聞いたこともありません……」

とのこと。

 

こちらは途中で社長さんが変わられていたので、おそらく先代の社長さんの時代からずっと残っていたのでしょう。

私はなんとなく「これって時効成立してるって言っていいのか? 金額も金額だし消したいな」と考え調べてみることにしました。

 

 

 

 

時効は「援用」しないと消えない!

そこで調べてわかったのは、

債権の消滅時効は「援用」という手続きを取らないといつまで経っても成立しない

ということ。

 

これはつまり、その時効の期間が経ったら自動的に支払う義務がなくなるわけではない、ということです。

難しい言葉もあるので、どういうことなのか、ざっくりとですが1つずつ見ていきましょう。

 

 

消滅時効とは

時効には種類があるのですが、今回は「消滅時効」というものに絞ってご説明していきます。

多分一般的な時効のイメージはこの「消滅時効」が大きいのではないでしょうか。

 

上に出した用語の意味として、

  • 債権 ⇒ ある人が、ほかのある人にある行為を要求できる権利
  • 消滅時効 ⇒ 一定の期間その権利を使わなかった場合に、その権利を消滅させる制度

ざっくり言うとこんな感じです(あとで具体例を出します)。

 

俗に、

「飲み屋のツケは1年払わなかったら踏み倒していい」

という言葉があるのをお聞きになったことはありますか?

(いや人としてはよくないんですけど^_^;)

 

これは飲食店の代金の消滅時効が1年、と決まっているからこのようなことが言われるわけです。

 

(※1)消滅時効の期間は債権によってさまざまで、「債権 時効 一覧」などと検索すると出てきます。またこの期間は遠くないうちに改正され簡素化される予定です。

(※2)当記事は簡素化して記載しており、時効は中断というものもありますので、ただ1年やその期間が経過すればいいというものではありません。

 

 

時効の援用とは

「援用」というとなんだか難しい言葉ですよね。

援用というのは、ざっくり言うと

「もう時効の期間が経ったから、私、この時効つかうね!」と相手に伝える

というような感じです。

 

 

具体例

プレゼント

たとえば雑貨屋さんであるAさんが、友人のBさんに「代金は給料入ったらでいいよ」と言って商品を先に渡してあげたとします。

  • このAさんがBさんにお金を請求できる権利が債権
  • 消滅時効はその債権によって決まっており、商品代金の場合は2年が消滅時効
  • そして2年後にBさんが「もう時効だから払わないもんね~」と言うのが消滅時効の援用

というとイメージしやすいでしょうか。

(Bさんムカつくな)

 

 

援用の手続き

とはいえ実際には「この日に相手に伝えた」というのが証明できないといけません。

実務的には時効援用通知書を、配達証明付きの内容証明郵便で郵送する、と言った手続きが一般的なようです。

(赤文字部分が引用。出典:松谷司法書士事務所様

 

 

一応条文

わかりにくい文章ですが、一応条文も引用しておきます。

(時効の援用)
第百四十五条  時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
出典:民法(e-Gov)

 

 

 

税務調査で言われることがある

これはそのうちまとめようと思っているのですが、売掛金や貸したお金が回収できなくなって断念することを貸倒損失(かしだおれそんしつ)といいます。

(貸倒損失の処理方法については『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは③』へ)

 

この貸倒損失というのは時期が非常に重要で、税務調査に入られた場合、「本当に回収できないのか」という問題のほかに、「いつ回収できなくなったのか」についてもよく揉めます。

なぜ揉めるのかは別記事に譲りますが、この揉めたときに、税務署側が、

「この時効はもう2年前に成立しているのだから、少なくとも計上する時期はおかしいですよね?」

と言ってくることがあるのです。

 

 

消滅時効は援用しないと成立しない!

もう上記で説明したあとですが、消滅時効は援用をしないかぎり成立しません

なので、この指摘は法律をわかっていない的外れな指摘なのです。

また、時効の期間についても、債権の種類によって違うことも知らずに「2年で時効でしょ?」と言ってくる調査官もいるようです。

 

こんなときは冷静に、ニヤニヤしつつ

「え、援用されてないのに時効成立しちゃったんですか? 民法、ご存じですよね?」

と教えてあげましょう。

(すみません実際はむだに煽ってもいいことありません。反論だけきちんとしましょう)

 

 

(余談)債務も指摘される可能性がある

聞いた事例ですが、多額の買掛金が残っていた会社さんで、

「この年で消滅時効が成立しているから債務免除益たたなきゃおかしいですよね?」

と税務調査の際に言われたことがあったそうです。

これも同様自社から援用しなければ時効は成立しませんので、注意しましょう。

(少し事例は違いますが、債務免除については『債務免除(債権放棄)が必要な場合とメリットデメリット』へ)

 

 

(余談)税金は勝手に時効が成立する

詳しく調べきれていないので、参考程度に見ていただきたいのですが、税金は援用しなくても時効が成立するようです。

根拠だけ引用しておきます。

(国税の徴収権の消滅時効)
第七十二条  国税の徴収を目的とする国の権利(以下この節において「国税の徴収権」という。)は、その国税の法定納期限(第七十条第三項の規定による更正若しくは賦課決定、前条第一項第一号の規定による更正決定等又は同項第三号の規定による更正若しくは賦課決定により納付すべきものについては、これらの規定に規定する更正又は裁決等があつた日とし、還付請求申告書に係る還付金の額に相当する税額が過大であることにより納付すべきもの及び国税の滞納処分費については、これらにつき徴収権を行使することができる日とし、過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第三項において同じ。)から五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。
2  国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする
3  国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法 の規定を準用する。
出典:国税通則法(e-Gov)

 

 

 

まとめ

というわけで、

  • 消滅時効について
    • (注意点)債権によって期間がちがう
    • (注意点)期間は遠からず改正予定
  • 消滅時効の援用について
    • 消滅時効は基本的に援用しないと成立しない
    • 援用するときは、配達証明付きの内容証明郵便で郵送する
  • 税務調査で「時効」と指摘されたら「援用の有無」を確認して反論しよう

という内容についてまとめました。

 

恥ずかしながら、私は上記の件で調べてみて初めて知りました。

しかしとある所で話を聞いていたら「時効の援用を知らない税理士は多い」という論調だったので、まとめてみた次第です。

 

それと時効の期間が経過していても、相手から請求されてお金を払ってしまったら、一定期間消滅時効を主張できなくなってしまうこともあるそうです。

正しい知識を身に着けて、自分のことは自分で守れるようにしておきましょう(飲み屋のツケは払ってあげてね!)

 

 

 

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<あとがき>

生活習慣を変えようと模索中です。4時に起きたい。

 

 

 

 

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読んでくださってありがとうございました