先ほど今日の朝刊を読んでいたら『脱税調査 クラウド情報が強制的に収集される』というような物騒な文言が目に入ってきました。
「え、世の中がクラウド化の流れになってるのに、これだと『紙のほうがまだいい』ってなっちゃうじゃん」
と思ったのですが、よく読んだら脱税とは縁のないようなまともな中小企業なら「いきなりクラウドのデータが見られる」と心配する必要はありません。
ニュース概要をまとめました。
ニュース概要
一部しか見られませんが、ニュースの概要はこんな感じです。
脱税、ITデータも調査
クラウド情報、強制的に収集 財務省、68年ぶり法改正検討
2016/10/10付日本経済新聞 朝刊財務省と国税庁は脱税調査に際し、クラウドなどインターネット上に保存されているメールなどの情報を強制的に押収できる権限を認める検討に入った。国税犯則取締法を68年ぶりに改正し、2017年にも実施する。IT(情報技術)を駆使した悪質な脱税や国際的な税逃れが増えていくとみており、国税の査察権限を強化する。夜間の強制調査も可能にする。
出典:日本経済新聞
要約
新聞記事も含めて要約するとこんな感じです。
- インターネット上に保存されている情報を強制的に押収できる権限を認める検討に入った
- 電子メールだけでなく、帳簿などの会計情報も対象
- 査察官が自宅や会社などからパソコンを差し押さえた上で、被疑者の同意なしに中のデータをコピー等できる法的権限を持たせる予定
- 同様の調査は刑事訴訟法では認められているが、脱税調査では慎重論もあり対応が遅れていた
- そのほか夜間や管轄区域外での強制調査も可能にする予定
注意点
この内容だけ読むとかなり物騒ですが、そもそもの対象が脱税調査(査察)であることは注意しなくてはなりません。
(脱税に対する調査の正式名称を「査察」と言います)
違い
同じ調査でも、映画「マルサの女」に出てくるような「脱税調査(査察)」と、一般の会社が受ける「税務調査」は大きく異なります。
ざっくり言うと、
- 脱税調査
・脱税の容疑者に対し、検察庁へ告発することを前提に行われる
・調査の前に裁判所から令状をとることが必要
・強制的に調査が行われ、差し押さえなども可能
・調査するのは国税局査察課
・調査の人数は数十人規模
- 税務調査
・申告が漏れていないか、申告した内容が正しかったかを調査する
・裁判所の令状は不要
・任意調査であり、ほぼ事前に連絡が来る
・小さめの会社は基本的に税務署(大きくなってくると国税局)
・調査の人数は1人~3人程度(国税局だともっと多くなる)
という感じです。
今回のニュースへの当てはめ
今回のニュースはあくまで脱税に対する調査(査察)を対象にしています。
そのため、そこらの中小企業が、法改正によって税務署にいきなりクラウドのデータが見られてしまう、ということはまずありません。
まとめ
というわけで、
- 脱税調査(査察)の際、クラウドのデータを強制的に押収できる権限を認める検討に入った
- しかしあくまで対象は脱税調査(査察)なので、そのへんの中小企業がいきなり税務署に見られてしまうことはない
という内容でした。
もちろん「これを契機にどんどん権限を増やしていくんだろ」という懸念はあり得べきものだとは思いますが、上記のように脱税の調査と通常の税務調査は明確にちがいます。
まともに税金を払っている多くの人からすれば、何億円もの脱税をしている人間がクラウドにデータを隠せばうまくごまかせてしまうかもしれない現状というものも、これはこれで納得がいかないものでしょう。
今回の検討自体は時代に合わせる必要があるものでは、というのが私個人の考えです。
情報を適切に集めて冷静に判断をくだせるよう心がけたく思います。