先日の『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは①』の一連の記事で、特定の費用を特別損失に持っていくことで決算書の評価を高める方法をご紹介しました。
今回は逆に、雑収入などの特定の収益(収入)を売上に移動させることで評価を高める方法をご紹介します。
目次
なぜ移動させるのか
特別損失のときも載せましたが、簡単になぜ評価がよくなるかをご説明します。
こんな損益計算書(P/L。ピーエル)の会社さんがあったと思ってください。
経常利益はプラスなんですが、残念なことに赤い四角の部分、営業利益がマイナスになっています。
以前もお伝えしたように、銀行などが決算書を評価するうえで非常に大切なのが
- 営業利益
- 経常利益
この2つなんですね。
なので営業利益がマイナスであるこの会社さんは、銀行などにあまりいい評価をしてもらえない、ということになってしまいます。
(「うちは本業で稼げてないんだぜ。どう?」と言っているような状態です)
移動したらどうなるのか
この会社さんは青い線の部分、「雑収入」という勘定科目に300万円が計上されていますね。
これを売上高に移動させてみましょう。
あら、営業利益が出た。
そう、特別損失のときと同じようにたったこれだけです。
これでこの会社さんが決算書を見せても、銀行などが「ちゃんと本業で稼げている会社だな。よしよし」と思ってくれる、というわけです。
また、最後の利益が変わっているわけではありませんので、税金の金額が増えることはありません。
これに関しては税務調査のリスクもそう変わらないでしょうし、デメリットらしいデメリットは特に思い当たりません。
(粗利益が増えてしまうので、移動した旨は申告時に一言記載しておいたほうがいいかもしれませんが、それは顧問税理士さんに頼めば通常やってくれます)
どういうものが移動できるの?
残念ながら「じゃあなんでもかんでも売上に移動させればいいじゃん!」というわけにはいきません。
この雑収入を代表とする、この営業利益の下にある収入を「営業外収益」というのですが、正しい意義を無視してざっくりと用語の解説をしますと、
- 売上高 … その会社が本業としてやっている事業の収入
- 営業外収益 … 本業ではないけれど、ある程度定期的に入ってくる収入
というようなイメージです。
営業外収益に計上されるものの例としては、
- 普通預金についた利息
- 株などを持っているときにもらう配当や分配金
- 貸したお金についた利息
- 家を貸しているときにもらう家賃
- 保険代理店をしているときの、保険の手数料収入
- 中古品などの売却収入
などが挙げられます。
この中でそこそこの金額になりやすく、売上高に移動できる可能性があるのは、
4番、5番、6番、の3つです。
それぞれもう少しだけ詳しく見ていきますね。
家を貸しているときにもらう家賃
とりあえず例として「家」と書きましたが、家だけでなく、店舗、事務所など、貸す用途や建物の種類はなんでも構いません。
ケースとしては、
- 自社ビルを建ててその一部を貸す
- 店舗などを買ってその一部を貸す
- 投資用として建物やマンションの一室を購入して貸す
- なんらかの事情により自社で借りた物件を貸す
といった場合の、家賃収入、賃貸料収入は売上高に移動できる可能性があります。
保険代理店をしているときの、保険の手数料収入
本業との結びつきが強く、保険代理店を一緒にやっているような業種があります。
たとえば家を借りるとき、不動産屋さんから火災保険を一緒に勧められたことはありませんか?
すべてではないでしょうが、あれってその不動産屋さんが保険の代理店もやっていて、保険会社の代わりに契約を結ぶことで手数料がもらえるんです。
そのほか中古車屋さんも代理店になっていることが多いですね。
この場合の、その保険の手数料収入は売上高に移動できる可能性があります。
中古品などの売却収入
特にレンタル業や、パチンコ店など、持っている商品をかなりの頻度で売ることがある業種があります。
こういった場合まとまった金額となりますので、その売却収入は売上高に移動できる可能性があります。
また、
- 製造業でスクラップ品を売却する場合
- 段ポールを売却する場合
なども、それほどの金額にならないかもしれませんが、移動できる可能性はあります。
注意点
デメリットはさしてないのですが、売上高に移動する際の注意点も挙げておきます。
それは、もし銀行などに「これ本業なんですか?」と聞かれたときに
「この収入は本業の収入です」
ときちんと説明できるようにしておいたほうがよい、ということです。
そして、本業として一番説明しやすいのが定款や謄本にその事業を載せてしまうことです。
定款や謄本に載せる
定款や謄本(全部事項証明書等)がお手元にある方は、見ていただくと、最初のほうに「目的」というような項目があって、そこに会社が目的とする事業が載っているかと思います。
こんな感じですね。
ここに載っているのが本業で、載っていないものは本業じゃない、と考えるとわかりやすいかもしれません。
なので、
- 定款を変更する
- 登記も変更する
という手続きを踏んで、目的に載せてしまえば「ほら、うちの本業でしょう」と胸を張って言うことができます。
具体的にどんな項目で載せるかというと、
- 家などを貸しているなら「不動産賃貸業」
- 損害保険の代理店をしているなら「損害保険代理業」
- 中古品を業者に売るならその物の「卸売業」、消費者に売るならその物の「小売業」
といったような事業を追加すればよいわけです。
ただし大した金額じゃなければ…
ただ登記をするとなるとお金もかかりますので、これらの収入がある程度の金額だったら検討する、というのが現実的な路線かなとも思います。
「ある程度っていくら?」と言われると「その会社さん次第です」という答えになってしまうのですが(^_^;)
あくまで目安として言うなら、
- 数万円ならやらなくてもよい
- 売上高が数千万の会社さんなら、数十万円あるなら検討する
- 売上高が数億円の会社さんなら、100万円以上あるなら検討する
というところかなあと思います。
どんな事業をしているかで大きく変わりますので、あくまで目安として、会社さんの状況にあわせて考えてみましょう。
まとめ
というわけで、
- 売上に移動させる理由
- 具体的な項目
- 注意点
についてまとめてみました。
移動する手間自体は非常に少なく、効果もある方法なのですが、残念なことに「決算書の評価を少しでもよくしよう!」と思っている税理士さんはまだそこまで多くはいらっしゃらないというのが実際のところです。
(昔よりだいぶ増えてると思いますが)
借入がある会社さんは、自ら顧問税理士さんに言うなどして、ぜひ一度検討してみてくださいね。
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<あとがき>
・初めてロジクールのトラックボールを買って使ってみています。手首すげえ楽。