税理士試験は通信講座でも受かるのか? 通信のメリット3つとデメリット3つ

やや難しめの税金・会計話

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

「これから税理士試験受けてみようかな」という検討をしている段階の方向けの記事ですが、ちょうど試験結果が発表された直後の時期でもありますし、ご相談をいただいたので書いてみます。

 

内容は、

  • 税理士試験は通信講座でも受かるのか?
  • 通信講座のメリットとデメリットはなにか?

についてです。

 

(申し訳ありませんかなり長文になってしまったのでご興味のない方はほんと読まなくて構いません。穂村弘さんの短歌解説紹介記事でご紹介した穂村弘さんの解説のほうが100万倍面白いです)

 

 

税理士試験は通信講座でも受かるのか?

プロフィールにも書いてますように私は税理士試験をすべて通信講座(ストリーミング配信のやつ)で受けています。

 

で、プロフィールを見てくださった方にときどき、

「よく通信講座で受かったね」

と言われることがあります。

 

ざっと調べても割合が出てこなかったのですが、ときどき言われることも含めて、私のまわりの方の傾向を見るに通学して合格した方のほうが明らかに多いようです。

(統計的にまったく有意じゃありませんので参考程度に)

 

というか通信講座だけで受かった、という人には今のところ会ったことがありません。

これは後述するように通学することによる強制性が大きいのでは、と思います。

 

 

 

「通信講座で大丈夫かなあ」と不安になっている方に

「自分の経験を一般化するなボケナスが」と言われたらそれまでですが、そうは言っても私は通信講座でもまったく問題なく合格できると考えています。

 

私は4年間(7カ月の専念期間含む)で5科目受かったので、7年とか8年とか言われる平均よりは早いほうです。落ちたのも法人消費相続の3科目を受けた年の相続税だけでしたし、勤めていた事務所は「試験?まず仕事を一人前にこなしてから言えや」というタイプで「定時だなんてメルヘン世界の言語は家に置いてきなさい」系の事務所でした(女性には優しかったのに…)。

なのでむしろ受かったのは通信講座のおかげ、通学だったら試験を受け切ることさえできなかったのでは、というのが振り返っての感想です。

 

もしだれかに「通信で受かるなんて思わないほうがいい」なんて言われたり、まわりにそんな人がいなかったりするのであれば自分が最初の事例になればいいだけです。

もともと1つの科目の合格率は10%前後なんですから自分のまわりに9人いたら自分だけが受かる(受からないといけない)、という状況の試験です。

私は大学に行けなかった人間なので学がないのは事実だとしても、多分強いコンプレックスがあるんでしょう、せめて「学があるっぽい雰囲気」を出すには「税理士になるしかない」と思い込んでいました。

そんな私にとって税理士は「働きながら取得を目指せる低学歴の星」だったんです。お金もなかった。だから必死でしたし試験当日の受験会場を見回して「お前ら全員落ちるけど俺だけは受かってやる」というそんな狂犬病かな?みたいな気持ちでいた時期も正直言ってありました。時期というかまあその4年間。

 

そもそもそんな「学があるっぽい」だなんてあほくさい雰囲気を出す必要があるのか、と問われればそれまでですが、少なくとも知識を売る商売で大学にも出ていないと、中には侮る経営者の方もいるのでは、というのが当時の考えでした。

仕事さえできればそう大きな支障にはならないはずですが、実務経験もそれほど積めていない時期だったので不安感が強かったのでしょう。

 

書いてて思い出しましたが一度「は?7カ月で3科目受けたの?そんな中途半端な姿勢じゃ全部結果出なさそうだね」と転職活動時の面接で言われたことがあります(試験の結果待ちのとき)。

その方は専念して1科目ずつ「丁寧に」取った時期があるらしいのですが、私の言い分としては試験に専念して1科目しか受けないなんて「本気度が足りないんじゃないの?そんなんで5科目合格する気あんの?」というふつふつとした思いが腹に沸き上がりました(口には出せませんでした)。

さすがにそんなことを言われる状況で採用されるわけもなかったのでその方に結果報告はできませんでしたが、まあ見る側によってものの見方や意見は変わる、というだけのことなんだろうと今は考えています。

 

 

 

とは言いつつも通信講座で受かるためには

申し訳ありません無駄話で長くなりました。

 

ともあれ、「通信講座でも問題ない」とは言いつつも通信講座で受かるには、

  • 「絶対に税理士になる」と決めて本気で打ち込むこと
  • 「短期間で終わらせる」と固く決意すること
  • 絶対に毎日やること(そういう気持ちでいること)
  • うまく結果が出ない時期でも「通信だとやっぱりダメなんだ」などと環境のせいにしないこと。自分の決断を信じること
  • 「うまくいったらまわりのおかげ、いかなかったら自分のせい」という気持ちを忘れないこと

というあたりは最低限持っていたほうがよいのかな、とも思います。

 

特に「本気度」「短期間で終わらせる」が大事ですかね。そういう気持ちがあれば通信講座でまったく問題ないでしょうし、ないのなら通学をおすすめします。

「コツコツやればいいや」ぐらいの気持ちなら通信はやめておきましょう。通信講座で長期間なんて想像しただけでもダレるし講座を再生できなくなります(経験談です)

 

あ、あと学校は選んだほうがいいかもしれません。

私は大原さんしか受けたことがないので比較できませんが、大原さんかTACさんならどちらでも大丈夫でしょうし、それ以外ならよく評判を集めたうえで決めるべきかと思います。数万円を惜しんで合格できない授業を受けてもしかたないので。

 

 

 

 

税理士試験 通信講座のメリットとデメリット

私が感じた通信講座のメリットデメリットも挙げておきます。

 

通信講座のメリット

通信講座のメリットには、

  • 受ける時間を選ばない
  • 2倍速の早送りなどができる
  • 移動の時間もお金もかからない

というものがあります。

 

受ける時間を選ばない

これが一番のメリットです。

私は前述のように「定時?なにそれ」系の事務所だったので、22時23時に帰ってご飯を食べながら、どんなに短くても30分~1時間講義を見ることができました。

 

「その時間の授業に行かないといけない」

「授業に出られないことが重なると、やる気がなくなってくる」

という通学のデメリットがありますので、働く環境によっては受ける時間を選ばないというのが通信講座の最大のメリットだと考えます。

 

2倍速の早送りなどができる

2倍速の早送りなどができるというのも非常に大きなメリットです。

私が受けたストリーミング配信での授業だと、1.5倍~2倍の速度で講義を聞くことができました。

 

通学だと2時間の授業は2時間聞かないといけませんが、通信講座ならうまくいけば1時間で授業が終わり、そのあとの時間を演習などに当てられます。

私は講義を聞くのが大っ嫌いで、しかし受けないと内容わからないしという気持ちでしたのでこの機能は本当にありがたかったです。

 

ただ注意点もあり、私の場合、

  • 早口で2倍速だとなに言ってるかわからない先生もいる
  • メモする時間が間に合わないので、ちょくちょく一時停止することになる

ということがあり結局平均1時間半はかかっていたと思います。「圧倒的に短くなるわけではない」ということは覚えておきましょう。

 

移動の時間もお金もかからない

移動の時間もお金もかからないこともメリットです。

通学だとどうしても、よほど条件が合うときを除き、

  • 近くに学校がないことがある
  • 通うための時間もお金もかかる

というケースがありますので、これらを回避できるのがメリットです。

 

 

 

通学講座のメリット(通信講座のデメリット)

それでは通信講座のデメリット、裏面から見ると通学のメリットとして、

  • 強制性が働く
  • 仕事の効率化を考えるようになる
  • 同じ目的を持つ仲間ができる

といったものが挙げられます。

 

強制性が働く

人間は弱い生き物ですから、授業の予定があることで強制的に「勉強しなくちゃ」と思い出せるのはメリットでしょう。

通信講座だとそのへん本当に自分の裁量次第なので、「予定をキャンセルする」という意識が働かない分、通学よりもかなり「今日はいいや」という気持ちになりやすいはずです。

(通信講座だと気持ちを戻すのも結構大変です)

 

また、わからないことをその場で質問ができるというのも通学のメリットでしょう。

(通信でもメール送ればそれほど待たずに返ってきますけどね。ただ質問を文章化して入力するのは少々時間がかかります)

 

仕事の効率化を考えるようになる

仕事の効率化を考えるようになるというのも大きなメリットだったんだなあと今しみじみと思います。

  1. 授業の時間がある
  2. そこに合わせて仕事を終わらせないといけない
  3. そのために仕事の手順を効率化したり、優先順位をつけて不要なことを切り捨てたり、完璧主義をやめたりする

というのが自然と鍛えられる(受かるために鍛えざるを得ない)、というのはとても大きなメリットです。

 

私は効率化うんぬんより「とにかく根性でやる」、というタイプだったのでここは本当におろそかにしていたと今感じています。

独立すると、徹底的に効率化して生産性を上げないと雑務ばかりでやるべきことが進んでいかないので、そういう習慣をつけておけばもっと苦労せず順応できただろうか、と思うことはよくあります。

 

同じ目的を持つ仲間ができる

たびたび書いていますが、私は同じ目的を持つ仲間ができるのも大きなメリットだと思います。

税理士や会計士の方のお話を聞いていると、結構みなさん受験当時の友人がいらっしゃるんですよね。しかも一緒に仕事をすることになったり人生のなかで意外なつながりができることがあったりするのを見ると、うらやましさを感じることもあります。

 

通信講座は本当にまったく友人ができないです。たまーに模試を受けに行っても知らない人ばかりですし通学の方は仲のいい人で固まっていますし、さっと行ってさっと帰る、ある意味エリートサラリーマンみたいになります。

 

ただ注意点としては「仲間をつくればいい」というものでもないことです。

真偽は知りませんが「ヌシ」みたいな人がいる、という話も聞きますので、「受かる気のない人」の近くにいて自分のやる気を削がれては元も子もありません。

あくまで同じ方向を向ける、励まし合える人とのつながりを持つべきでしょう。

 

 

 

 

おわりに

というわけで薄い内容のわりに異常な長文でいろいろ書きましたが、改めてメリットデメリットを考えてみると、

「もしかしたら通学のほうがメリット大きいんじゃないの?」

と思えてきたのは不思議です。

 

ただまあ私が言いたいこととしては結局「通信講座でも合格することはできるよ」ということです。

リアルで会う方には、試験話がやたら好きな士業の方もいらっしゃいますが、あなたが試験でどんなに苦労したかはお客さんはまったく興味がないし関係ありません。

お客さんにとって大事なのは「今のあなたが何を与えてくれるのか」です。

試験なんて能力とはほとんど比例しないのだから、やると決めたのであればとにかく短期間で合格することを目標にすべきです。

そのために必要であれば通信講座を選ぶことも、有意義な選択だとして私は存分に背中を押します。

 

こんなのがご相談くださった方のお役に立つかはわかりませんが、ほんの少しでも参考になるところがあれば幸いです。

 

 

 

 

■ 次の記事はこちら

『一人前の税理士になるには何年必要なのか?独立には?』

 

 


読んでくださってありがとうございました